前回の記事で年収に関する不安を考えました。
そこで実際どれぐらい収入があれば精神的に安定するのかを素人なりに調べてみました。
休職中の身で収入が減っている今こそ、精神的に安定するためには何が必要かを考える機会になりました。
幸福度(ウェルビーング)と関連する年収は約800万円!?
一般的に世帯収入が約800万円(約750,000ドル 2010年の論文で当時は1ドル80〜90円)で幸福度が頭打ちになるとのことです。(2024年は円安のため現在に合わせると海外ではさらに高額と思われます)
幸せはお金では買えない、という主張がここから生み出された様な気がします。休職中の身としては嬉しい解釈ですが、どうも趣は違う様です。
まず、収入と幸福度という考え方は過去に2つの論文が相反する結果を導いていた様です(Kahneman, Deaton, 2010年. Killinmgsworth, 2021年)。
2010年の論文では中央値75,000ドルで幸福度の上昇が認められなくなるとし、収入と幸福度はある時点から相関しないと報告しました(Kahneman, Deaton, 2010. High income improves evaluation of life but not emotional well-being)。
2021年の論文では収入の増加とともに幸福度が増加し続けると報告しました(Killinmgsworth, 2021. Experienced well-being rises with income, even above $75,000 per year.)。
そして昨年2023年に2つの論文の著者が報告内容を検討し、その結果を報告しています。その結果は、①幸福度が低い人は収入が増加してもある一定額以上からは幸福度が上がらなくなる、②幸福度が高い人は収入が上がるほど幸福度がさらに上がっていく、とういうものでした(Kahneman, Killinmgsworth, 2023年)。
グラフの線は上から幸福度のスコアが80・70・50・30・15パーセンタイル
幸福度が最高の群(最上段)は収入の増加とともに幸福度も飛躍的に増加している
幸福度が最低の群(最下段)はある一定額までは収入増加とともに幸福度が上昇しているが、ある一定額を超えると幸福度上昇を認めなくなる
Kahneman, Killinmgsworth, Income and emotional well-being: A conflict resoluved. PNAS 2023 Vol. 120 No. 10 Fig. 2
うーん、幸福度が高い人ほど収入増加に伴ってさらに幸福度が上昇しているという結果はなんとなく寂しさを感じます。しかし紹介した2023年の論文に限りませんが収入と幸福度は決して強い相関を示していない様です。財政状況、家族関係、仕事、地域社会と友人、健康、個人的自由、個人的価値観などの7大要素が幸福度に独立して影響を与えている*と言われています。つまり収入は幸福度に対する1つの判断材料で全てではないことが伺えます。(*Layard, R. 2005 Happiness : Lessons from a new science. New York : Penguin Books.)
今までは海外のデータでしたが日本でも調査が行われており、10年前のデータにはなりますが、その時の考察ではやはり収入と幸福度はあるところから飽和状態になるとされています。
2021年の日本の調査結果では所得と幸福度はある一定額で飽和状態。
この時の考察では日本の所得が比較的高いと判断されている
林田吉恵, 幸福度と所得との関係. 経済学論究第73巻第1号 p.51-64
私としては収入が多いことに越したことはありません。
日々の生活だけでなく学費や趣味、子供の習い事、週末に時々家族と外食など自分がしたいな、欲しいなっと思った時に我慢せず手に入れることができたらそれはそれで幸せなのかもしれません。小学生の時、任天堂のファミリーコンピュターが全盛期で友達はほとんど持っていました。しかし私の親は決して買ってはくれませんでした。決して裕福ではなく、小学6年の時のお小遣いは月100円でした。当然、友達と出かけても駄菓子屋でお菓子を買うことはできないため、いつも店の外で待っていた記憶があります。
でもその時のことが嫌な思い出として残っているわけではありません。確かにバイトして就職して自分の自由なお金が増えると、子供の時の反動からかゲーム機などは欲しいと思った時に買ってしまいましたが・・・。自分の子供たちが買い物途中で欲しいものも多く主張してきますが、その場で買わず必ず一度家に持ち帰る様に心がけています。本当に欲しいもの、必要なものは1週間後も必ず覚えているもので、子供達が忘れていたらそれは必要のなかったものと判断し買わない様にしています。
論文にあったように世帯所得で800万円、円安ならさらに高額かもしれませんが、その様な金額には遠く及ばない我が家ではありますが、子供の学費、習い事はなんとか確保していきたいと思います。
急がず、慌てず、しっかり自分を見据えて復職を目指したいと思います。