前回のブログで休日の過ごし方について長女から学んだことを綴りました。
そして妻から「休養学」という一冊の本を紹介されました。今回は少しその内容に触れながら、もう一度、自分の休日の過ごし方を振り返ろうと思います。
休養学とは
「一般社団法人 日本リカバリー協会」https://www.recovery.or.jpをご存知でしょうか。私は全く知りませんでしたが。
今回紹介する本は「あなたを疲れから救う休養学」(東洋経済新報社)で先ほどの日本リカバリー協会代表理事で医学博士の片野秀樹さんが執筆された本です。表紙の帯で「休むこと=寝ることではありません」と記載されているように、今までの自分の休日の過ごし方を否定されているかのような見出しでした。そしてその内容はやはり予想通り、自分の固定概念が崩される内容でした。
https://str.toyokeizai.net/books/9784492047484
そもそも休養学とはどのような学問なのか、それは健康づくり三大要素「栄養、運動、休養」のうち栄養と運動に関する学問は体系化が進み教育を受ける機会が多くなってきましたが、休養に関しては学問として確立していないため生まれた分野とのことでした。そして現在の疲労は一昔前の疲労とは異なり、デジタルディバイスに対するストレスが主流になりつつあるため、昔と同じ休み方をしていたのでは、疲労がうまく取れない恐れがあると主張されています。この本では人はなぜ疲れるのか、疲れても無理をして休まずにいると人間の体はどうなるのか、どんな休み方をすれば最も効果的に疲れが取れるのか、といった疑問に答えてくれるようです。
意外、日本人は意外と休日が多い!?
日本は休みが少ない、というのが私の認識でしたが、どうも誤っていたようです。日本の平均労働時間はOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均労働時間1752時間よりも少なく1607時間と266時間も短く、1日8時間労働として計算すると33日も多く休んでいることになることにはかなり驚きました。ただし休職中ですが私の職場では一日7時間勤務で公休が110日でしたから労働時間は1775時間ほどになります。ここに有休20日消化したとしても世界の平均よりも労働時間が短いことになります。
そして日本人は約8割の人が疲れており、20代から30代の女性が最も疲れており、睡眠時間が短い、といった特徴があること。私にも当てはなりますが休まないことが美徳、長時間働くことが組織に貢献している、といった認識を持っているのも事実です。
ではなぜ8割もの人が疲れているのでしょうか。そこには時代とともに疲れ方が変わったことがあるようです。体は疲れてないのに頭の中が疲れている、といった具合に変化しているようです。そして肉体だけが疲れている時と同じ、体を休めておくことが休養、という方法で休日を過ごしてしまうために頭の疲れが残ったまま労働に戻ってしまうという循環になっているようです。
では諸外国ではどのように休みの日を過ごしているのでしょうか。運動やスポーツをする、家族・友人・恋人と過ごすなどの項目が体を休める以外に回答が多かった項目になるようです。日本では逆にこの項目が少なかったようです。
疲労を生み出しているのはストレス!?
日本疲労学会が定義する疲労とは「過度の肉体的及び精神的活動、または疾病によって生じた独特に不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退した状態である」です。その疲労を知覚しているのが疲労感になります。疲労感は痛みや発熱などと同様に体から異変を知らせるサインなのです。痛みや発熱などは、程度にもよりますが、気合いでどうこうできるものではないと思います。しかし疲労は気合いや栄養ドリンク、コーヒーなどで一時的にマスキングすることが可能です。そしてそのようにマスキングしながら疲労を放置してしまうと酷い時は燃え尽き症候群や慢性疲労症候群などの症状に至ってしまいます。
では疲労を生み出す原因はなんなのでしょうか。それはストレスだと言われています。人は様々なストレスから身を守っています。そしてそのストレスに適応するように体が反応した結果、疲労が生み出されます。そのストレスを生み出すストレッサーには大きく5つの種類に大別されていいます。物理的(寒暖、騒音、振動など)・化学的(公害、薬物、化学物質など)・心理的(不安、緊張、怒りなど)・生物学的(細菌、感染、ダニなど)・社会的(家族関係、友人関係、人間関係など)ストレッサーです。そして時代とともに影響が大きくなったのが社会的ストレッサーだと言われています。
ストレスに対応するためには難しいメカニズムが反応するようですが、ここでは内分泌系と自律神経系に焦点を当てて説明されていました。内分泌系も自律神経系もどちらも恒常性(ホメオスタシス)に大きく関与しています。本書では大まかなメカニズムを紹介されていましたが、詳細は本書に委ね、要は皆様も予想されているように、ストレスがかかると内分泌系にも自律神経系にも負荷がかかり全身の状態が乱れた状態に至ってしまうということです。ストレスによって様々な環境への適応が要求されますが、その都度、私たちの体は恒常性を保つために信号を出し続けようとします。当然、活動し続けた組織はその役割が維持できなくなり適応できなくなることは容易に想像できます。
時代とともにストレッサーの要因が変化し、適応するために体の反応部位も変化したため、ただ単に休日は寝てればいい、ということでは疲労が回復しない構造になっているようです。
休養に必要なのは活力、そして鍛えられる!
活動すれば当然エネルギーを消費して疲れが溜まります。体を休めることでエネルギーは回復しますが、休めているだけではストレスに対抗した体の反応は補いきれず、100%に満たない状態で次に活動に移行してしまいます。
そして疲労に対抗するためにはその対義語にあたる活力をしっかりとつけることが大切だと述べています。つまり活動→疲労→休養のサイクルではなく活動→疲労→休養→活力とすることで100%までの回復を目指すと論じています。そして活力は鍛えることができるようです。
ここでは筋肉の超回復理論を例に取り上げ説明していました。筋肉の超回復理論とは限界までの筋トレを実施した後、筋肉組織の回復時間を待たずにさらに筋トレをすると筋力は逆に低下していきますが、回復時間(24〜72時間)をしっかり待ってあげるとトレーニング前よりも筋力が向上する、というものです。
休日の過ごし方に活力を取り入れ、少しずつ負荷を与え体力の底上げを図る方法を提案されています。その負荷で大切なことは、自分で決めた負荷であること、仕事とは関係のない負荷であること、それに挑戦することで自分が成長できるような負荷であること、楽しむ余裕があること、以上の4つが最低限大切とのことです。守りの休養から攻めの休養にシフトすることで負荷に対する認識も変わってくるようです。
どんな休養方法があるのか、7通りを説明
休養学では7つの休養モデルを定義されているようです。
休養は大きく生理的休養、心理的休養、社会的休養の3つに大別され、生理的休養に①休息タイプ、②運動タイプ、③栄養タイプ、心理的休養に④親交タイプ、⑤娯楽タイプ、⑥造形・想像タイプ、社会的休養に⑦転換タイプのモデルが該当します。
①休息タイプはそのまま消極的休養で睡眠や休憩がこれにあたります。休日に映画やテレビを寝ながら見ることも休憩になりますが、だらだらでは活力が向上しません。自分で決めた時間と内容で休憩することが大切です。
②運動タイプは積極的な休養で主体的な休養なので攻めの休養としてお勧めされていました。運動の効果は多岐に渡り、最近は書籍でも多数報告されているため、詳細はそちらを参考にしていただければと思います。運動も有酸素運動から筋力トレーニング、ヨガや太極拳、そしてストレッチも運動に該当すると思われます。休息、運動共にサーカディアンリズムの調整にも大きな影響を与えるため、バランスが大切ですね。
③栄養タイプは休養学では食べ過ぎないこと、が体を休めることにつながるとされています。栄養に関しても運動と同様に様々な書籍で紹介されていますし、運動と同様、時代によって考え方や捉え方が変化しています。でも時代が変わっても昔から腹八分目と言われているように内臓を休めてあげるという考え方は残っています。
④親交タイプは字の通り人と交わることでストレス解消に繋げていくことを目的としています。人に限らずペットと触れ合うことも親交タイプの一種です。ただ私もそうですが、人と触れ合うことが逆にストレスになることもあるので無理に進行する必要はありません。少し視点を変えて自然に触れることも親交の一つになるようです。森林浴や海岸の散歩など人によってリラックスできる自然は異なると思いますが、自分が落ち着ける自然と接することが親交には大切です。
⑤娯楽タイプも字の如く趣味嗜好を追求する休み方です。音楽を聴く、映画を見る、ゲームをする、など自分が決めた内容を決めた範囲で積極的に実践することが娯楽タイプの休養になります。またこのような娯楽内容で自分の落ち着ける刺激がある程度把握できれば、ストレスが強い時などに休養に繋げる可能性があります。
⑥造形・想像タイプは絵を描く、作曲する、ハンドメイドやDIYなど何かを作るといった創作活動全般を指します。一つのことに集中すると疲労を忘れることができます。形のある、目に見えるものを残さなくても構わず、地図や時刻表を眺めて旅行している気分になったり、美術館で絵を見ながら色々想像するのもこのタイプに含まれるようです。瞑想や空想などもこのタイプに含まれ、好きなことを空想することも休養につながるようです。
⑦転換タイプは周りの環境を変えること、引っ越しや転職など大掛かりなものではなく、自分の周りの環境を変えるということを意味します。洋服を着替える、家具の配置を変える、花を植えてみる、整理整頓をする、そんな内容も含まれます。そして最も大きな影響あるのが旅行のようです。買い物や外食も転換タイプに含まれます。
このように攻めの休養には様々な行為が含まれ、そしてそれらを組み合わせながら活力の底上げを図ることが可能になります。
改めて自分を振り返ると
本書ではさらに休日の過ごし方、考え方などを深く幅広く紹介されていました。もしご興味ありましたら、ご一読をお勧めします。
私は昭和の生まれですが、私が就職当初から抱いていた印象はまさに休養学とは真逆の認識でした。夜遅くまで残業する方が会社に貢献している、体調を崩して休むことは甘えであり少々のことは気合いで乗り越える、そんな印象でした。休みの日に講習会、勉強会があった日は次の日の仕事に対して憂鬱な気持ちが先行していたことを記憶しています。と同時に、いざ月曜日の朝になった時、日曜日に寝て過ごした時よりも週末に何かしらイベントがあった方が体が軽く、前日の憂鬱感が著減していたことも思い出されます。
今のようにパワハラに耐えながら仕事や休日の出勤が継続することは全く休養にはつながらないと思います。しかし自分の成長につながることや趣味、そして家族と過ごす時間などで休日を過ごすと、その日は確かに体の疲れを感じますが、週初めの仕事に対しては前向きに考えれるようになっていたと思います。さらに翌日の仕事を忘れるぐらい、何かに熱中できた時はなんとも言えない満足感があったことを記憶しています。
前回の長女が休みの日に習い事をしても翌日、元気よく学校に行けるのは攻めの休養を実践していたからに他なりませんでした。
本当に家族から学ぶことが多いです。